偏る報道 八ン場ダム、温暖化中期目標報道をめぐって
No.376 偏る報道 八ン場ダム、温暖化中期目標報道をめぐって
メディアの報道姿勢については、以前からいろいろ言われているが、今回、八ッ場ダム中止の報道を見ていて、本当に一方的ではないかとの思いを強くした。
民主党は建設中止を決め、前原国交大臣が現地入りした。現地の有力者は建設中止反対の国交省に、住民との対話を中止、抗議文手渡しなどの派手な動きを見せ、メディアは一斉に、この問題の解決をどうするかは民主党政策の試金石とか民主党の命運を左右するなどと書き立てた。
これまでに気づいた報道への疑問点を並べてみよう。
1.移転する(した)住民にも中止賛成者がいる様子だが、彼らの声は聞かれていない。周囲の状況で発言できないとの声もある。
2.建設目的がなくなったことへの的確な報道がない。
・東京、埼玉、千葉などへの水供給は、既に水余りで必要なし
・利根川の洪水調整機能は、理論的にないとされている
3.建設目的に報道側で“発電”が付け加えられている。
事実は、八ッ場ダムには発電目的はない。八ッ場ダムを造ることで流域の東電の発電所が止まるためにその補償金が問題になっている。
4.建設予定地の地質がダム建設には不向きとの指摘が無視されている。
5.工事の進捗率70%は、総事業費がすでに70%使われたとの誤りとの指摘がある。ダム本体ができていない状態で全体の工事の進捗率が70%はあり得ない。
6.総事業費は今後大幅に膨らむこと必至だが、そこは無視。また完成後の維持費についても言及なし。
7.工事中止によって守られる自然についての言及がない。
8.中止の判断根拠への言及なし。
八ッ場ダムについては、建設賛否の激しい論議が長年にわたって続いてきた。記者がもしその議論に目を通して、公正に報道するなら、報道姿勢が違うのではないかと思われた。
記者は取材して短時間で原稿をまとめる、その能力はすばらしいとも思うが、非常にせっかちで短絡的なところがある。筆者も会社にいた頃何回も取材を受けたが、正直な話、参った。彼らは話をきちんと聞かない、自分が関心があるところだけを大きく書く。従って本筋をそれて枝葉末節のところだけが膨らんでいるなどの経験がある。
今回の報道については、記者は不勉強である。切り込みがステレオタイプになってしまっていて丁寧さがない。
同じことが、温暖化対策の中期目標25%の報道でもある。家計の負担が**円になるとの報道が繰り返されているが、その根拠は08年4月麻生内閣の内閣官房が発表した文書である。この文書は麻生前総理が中期目標を決めるとして、にわか作りの“中期目標検討委員会”にまとめさせた6つの選択肢だ。記事は文書の行間が全く読めていない。文書の作成に当たった国立環境研究所などからの取材をしていないために内閣官房の文書に載せられていない部分への考察がない。政府あるいは財界発表をオウム返しに報道しているだけだ。
(この件では、民主党が再計算をすると発表したが、単純に再計算してもでたらめは露見する。環境研究所は最初から国民の負担は大きくならない、と言っていたものである。だが、そもそもの選択肢の作り方、前提の設け方から恣意的であるので、白紙からやり変える以外にないだろう。)
記者の不勉強、安易な取材姿勢、ステレオタイプな記事で、結果的には前政権などの思惑に乗った報道になっている。彼らがそこになぜ気づかないのか、不思議である。これでは新聞・テレビ離れをどうして食い止めることができよう。 (09-10-2)
参考:八ッ場ダムを考える会編 “八ッ場ダムは止まるか”2005年 岩波ブックレット
嶋津暉之 “八場ダム問題の解決とは何か” 世界 09年10月号
メディアの報道姿勢については、以前からいろいろ言われているが、今回、八ッ場ダム中止の報道を見ていて、本当に一方的ではないかとの思いを強くした。
民主党は建設中止を決め、前原国交大臣が現地入りした。現地の有力者は建設中止反対の国交省に、住民との対話を中止、抗議文手渡しなどの派手な動きを見せ、メディアは一斉に、この問題の解決をどうするかは民主党政策の試金石とか民主党の命運を左右するなどと書き立てた。
これまでに気づいた報道への疑問点を並べてみよう。
1.移転する(した)住民にも中止賛成者がいる様子だが、彼らの声は聞かれていない。周囲の状況で発言できないとの声もある。
2.建設目的がなくなったことへの的確な報道がない。
・東京、埼玉、千葉などへの水供給は、既に水余りで必要なし
・利根川の洪水調整機能は、理論的にないとされている
3.建設目的に報道側で“発電”が付け加えられている。
事実は、八ッ場ダムには発電目的はない。八ッ場ダムを造ることで流域の東電の発電所が止まるためにその補償金が問題になっている。
4.建設予定地の地質がダム建設には不向きとの指摘が無視されている。
5.工事の進捗率70%は、総事業費がすでに70%使われたとの誤りとの指摘がある。ダム本体ができていない状態で全体の工事の進捗率が70%はあり得ない。
6.総事業費は今後大幅に膨らむこと必至だが、そこは無視。また完成後の維持費についても言及なし。
7.工事中止によって守られる自然についての言及がない。
8.中止の判断根拠への言及なし。
八ッ場ダムについては、建設賛否の激しい論議が長年にわたって続いてきた。記者がもしその議論に目を通して、公正に報道するなら、報道姿勢が違うのではないかと思われた。
記者は取材して短時間で原稿をまとめる、その能力はすばらしいとも思うが、非常にせっかちで短絡的なところがある。筆者も会社にいた頃何回も取材を受けたが、正直な話、参った。彼らは話をきちんと聞かない、自分が関心があるところだけを大きく書く。従って本筋をそれて枝葉末節のところだけが膨らんでいるなどの経験がある。
今回の報道については、記者は不勉強である。切り込みがステレオタイプになってしまっていて丁寧さがない。
同じことが、温暖化対策の中期目標25%の報道でもある。家計の負担が**円になるとの報道が繰り返されているが、その根拠は08年4月麻生内閣の内閣官房が発表した文書である。この文書は麻生前総理が中期目標を決めるとして、にわか作りの“中期目標検討委員会”にまとめさせた6つの選択肢だ。記事は文書の行間が全く読めていない。文書の作成に当たった国立環境研究所などからの取材をしていないために内閣官房の文書に載せられていない部分への考察がない。政府あるいは財界発表をオウム返しに報道しているだけだ。
(この件では、民主党が再計算をすると発表したが、単純に再計算してもでたらめは露見する。環境研究所は最初から国民の負担は大きくならない、と言っていたものである。だが、そもそもの選択肢の作り方、前提の設け方から恣意的であるので、白紙からやり変える以外にないだろう。)
記者の不勉強、安易な取材姿勢、ステレオタイプな記事で、結果的には前政権などの思惑に乗った報道になっている。彼らがそこになぜ気づかないのか、不思議である。これでは新聞・テレビ離れをどうして食い止めることができよう。 (09-10-2)
参考:八ッ場ダムを考える会編 “八ッ場ダムは止まるか”2005年 岩波ブックレット
嶋津暉之 “八場ダム問題の解決とは何か” 世界 09年10月号
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