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zoom RSS ○○ミュニケーションの陥穽 実施者は自分の立ち位置を考えよ

<<   作成日時 : 2017/03/18 01:02   >>

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No.690 ○○ミュニケーションの陥穽 実施者は自分の立ち位置を考えよ

3.11の大地震・大津波・原発事故後のリスクコミュニケーションとかサイエンスコミュニケーションで奮闘した“科学者”が大勢いた。だが、成果が上がったようには見えない。

 ○○コミュニケーションは何もこの災害の時から始まったわけではない。サイエンスコミュニケーションは、科学分野で専門家と一般の人々の知識格差が余りにも大きくなっている現状を少しでも埋める必要があるとの認識からスタートした。リスクコミュニケーションは、リスコミとも略されるが、企業と周辺住民の相互理解を深め、不要な懸念や不信の除去という意味があった。3.11災害に関するリスコミは、それまでのものとは趣を異にし、概ね、放射線に対するリスクについての理解の伸長であり、今ここにあるリスクへの考え方・対処方である。

 3.11以後、両コミュニケーションの強化が叫ばれ、現地で繰り返されたようだ。中身はもっぱら原発の安全性と放射線放射線の人体影響についての“科学”、またはリスクの考え方。なぜ両コミュニケーションが必要とされたのか?誰が必要としたのか?

 必要としたのは被災者ではなかった。被災地で獲れる農水産物の消費者でもなかった。

‘被災者も消費者も放射線に対する正しい知識を持っていない。それが“混乱を”拡大している。混乱を鎮め、平常な状態を取り戻すために、彼らへ正しい知識を与え、望ましい行動に導く必要’、それが実施側の思いだ。政府や県などの行政側の思い、電力事業者の意図と一致する。そう、‘被災者は無知!一般人は無知!だから啓蒙が必要!’だが、それなら、何もわざわざ○○コミュニケーションと言うこともない、教育であり、説得、知識の一方的授与でいいだろう。

 ○○コミュニケーションと言うからには、双方向の対話だ。対話する人は同じ地平に立っている。だが、主催者がテーマについて圧倒的多くの知識を持ち、受け手がそれほどでもないという情報の非対称性は歴然としている。

 授業や講義と○○コミュニケーションの違いは何だろう?情報の送り手と受け手の人間的な位置関係なのかもしれない。授業なら教える側と学ぶ側は身分的にも位置関係もはっきりしている。年齢的にもかなりの差があることが多い。

 成人への教育となると、送り手と受け手の年齢差も、その分野以外の知識差はないどころか、逆転は普通のことである。その辺りを考慮して、送り手と受け手はその知識以外は対等だということ、よって知識の授与も対話的にやろうということ、その違いかなとも思う。つまり相手への敬意と伝達方法の違いと言うことになろう。砕けて言うなら、成人教育の効果を上げるためには、学校教育のように高いところから一方的にやっても効果がない、相手への敬意がまず必要ということだろう。

 さて、原発関連の被災者への放射線に対する○○コミュニケーション。また、原発立地地区における原発の○○コミュニケーション。成り立つものなのか?

 被災者は、事故で死の淵にまで追い詰められて、‘ああやっぱり騙された‘と気づいた。その時は職も財産も、家庭のぬくもりも、故郷も失っていた。親族を亡くされた方もいる。半世紀にわたり“原発は安全、未来の火”と、骨の髄までたたき込まれてきた。一部の人々からの危険の指摘も、あり得ないこととはねつけてきたが‘まさか’がきた。やっぱりきたのだ。裏切られたのだ。自分たちを騙したのは誰?そして今、汚染された空間に戻ることが強いられている。汚染された空間では、少量とは言え、24時間、365日、ほぼ一生、絶え間なく放射線を浴び続けることになる。低線量被爆は心配がないと科学者や行政が言っている。○○コミでも心配ない、正しい知識を持てと言われる。だが、それらは‘原発は大事故を起こさない、絶対に安全だ、正しい知識を’と言われてきたのと同じではないか?

 もう、ここで○○コミュニケーションの成り立つ余地はない。共感が成り立たない。逆に、怖い思いをしてきましたね、放射線も怖いものですよ、と言われる方がストーンと胸に落ちる。そこにあるのは被災者の科学と技術への不信というようなものを越えている。不安、死の恐怖の前に科学は無力だ。

 サイエンスコミュニケーションも、それと類縁のリスクコミュニケーションも、それらが成り立つ前に、科学と科学者への信頼があることが必要だ。さらに今回のケースでは事業者とその背後にいる政府への信頼があって成り立つことだろう。果たして、それらはあるのか?サイエンスだから、事業者とか行政は関係がない、と言うのには無理がある。論文を書いているのとは違う。生身相手のことだ。

 さて、事故後、科学は信頼を取り戻すべく何をしてきたか?科学者は何をどう反省し、どう振る舞っているか?事業者は?政府は?県や市は?
 答えははっきりしている。言うに及ばない。○○コミュニケーションどころではなかろう。線量が高いところに人を住ませて、安全だなどと強弁しても、住まされる側の不安感は募るだけだ。

 ○○コミュニケーションを主催した人々は相手を間違えていたのだ。そもそも、相手は無知だから、という思い込みが誤りの元だった。問題は知識量の格差ではないのだ。命の問題、生活の質の問題だ。知識と命または生活の質とどちらが重たいか。それを奪おうとする者、守ろうとする者のせめぎ合い。そこを取り違えた○○コミュニケーションではなかったか。実施側は自分の立ち位置を確認するとともに、自分の尊大さと無知を恥じてよかろう。  (2017-3-18)



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